日の当たる場所で

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私は内心、少し何者かわからない恐怖を抱いていたが打ち消す 私に害はないだろう、感だが 立ち上がった姿は私よりも小さな背で、長い髪を後ろに流しているようだ ……男、か? 彼(と呼ばせてもらう)は私のことをじっと眺めた後に私の持っている花冠に目をやり、かすかに目を見開いた やはり、これを持ってきて正解だった この森を守れというのも、彼がいたからなのか? 「私は花の国パルルカの国王であるソレアリウス。あなたは…一体何だ?」 問うと、彼はゆっくりと口を開いた 「私は、ただこの森にいるだけ」 問いの答えになっていないような言葉が返ってきたが、要するにこの森に住んでいるということだろう ゆっくりと彼の隣を通り過ぎて、大きな木の切り株へと花冠を置く 手に抱えていた花冠と一緒に持っていた本を目の前に持っていき、ゆっくりと開いてみせる 私には読めないが、彼には読めているのかゆっくりと目が文字を追っている 彼を挟むように後ろに立っている護衛の騎士も、何も言わずにこの行為を見ているだけだ 最後まで頁をめくり、どんな顔をして読んでいるのかと顔を見ると、ほろほろと目から涙を流していた 慌てて布を取り出して拭おうとするも彼の体は透けていて、どうすることもできなかった 動揺を押し殺して、話しかける 「これは、あなたに関係のあるものか?枯れた花の冠と、本が一緒になって置いてあった。ただ本の中身は読めない。はるか昔の言葉だ」 「…彼女の、言葉。あなたは幸せに、なれたのですか」 独り言のように出た言葉の意味を理解する前に彼が動き出す 私が本を見せるのに邪魔だと切り株の上に置いた花を手に取り、持ち上げた 透けているのに何故!と思ったが、顔に出さずに見守る 彼はそっと花冠の花に口付けた すると、枯れていた花がゆっくりと瑞々しさを取り戻していく やがて生花を使った冠のようにまでなったそれを、私の頭へと背伸びをして乗せてきた 「ありがとう…。知らせてくれて」 花の冠を乗せたまま手を胸に当てて軽く一礼してから城へと戻ろうと踵を返す 彼はこれからもここにいるのだろう 私が生まれた時から何もなかったこの森は、別の姿を見せていただけだった 魔物のいない森だから、珍しいから守っているのだと思っていた私の考えはどこかに消えた まずは、彼のことについて知らなければいけない 私はこれからの国のこと、自分のこと…そしてこの森に住むという彼のことを考えながら獣道を歩いて行ったのだった
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