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ゆっくりとした時間が流れます
空は青くすんでいて…切り株の端には小鳥たちが並んで音を奏でていました
白い霧に覆われたまま私は眠りにつきました
私はあまりにも多くの瘴気を溜め込みすぎていて……毒され続けた私の体には自分の瘴気をどうにかするすべはありませんでした
時間をかけてゆっくり、ゆっくりと元に戻っていくのを待って、ようやく動けるようになった時には全て終わっていました
はじめに見えたのは白い花弁
そして以前と変わらない姿になった、私の箱庭でした
この森は外に出来た国の王が代々守ってきたものだと聞きました
一番始めに見た青年
私の元へ来た彼は私にとって懐かしい物を持っていました
彼女が書いた文字、私が彼女に残したたった一つのもの
彼女はもういません
当たり前です
彼女は人間なのですから
白い霧の中で少女が言ったように、私はこれからもずっと見ていくのでしょう
かすかに森がざわついています
何かが草をかき分けて来る音…何人もの人が言い合う声が聞こえました
私は切り株に預けていた体をそっと起こして立ち上がります
程なくして言い争うような声が聞こえなくなったかと思うと、木々の隙間から声の主と思われる人の姿が見えました
茶色い髪に同色の瞳の背の高い男と、青い服を着た白い髪の少年
その後ろから、いつもここへ来る国王と護衛の二人が険しい顔をしながら現れました
「やだなぁ、なんかするって言ってないじゃん?それにあんたらが勝手に言ってるだけで入るのは自由だろ?」
「ここは王家の私有地だと言っているだろう。お前達を連行してもいいんだぞ…ここは争いは禁止だからやらないが」
「は?知らねっつの。どこの王だかなんだか知らないけどなー、こんな真昼間から出歩いてるやつは信用できねぇの。…お、あんたか。精霊は」
「いや……本当にすまない…。一度断りを入れたほうがいいと言ったのに聞かないんだ…すまない…」
白い髪の少年が国王と言い合いをする中、茶色の髪の男が後ろの護衛の人たちに仕切りに謝っています
…なんだか、すごくにぎやかで
ふっと、楽しい気持ちが溢れてきました
「場所を探してたんだけどさ?ここしかなかったんだよな。あんたはうるさいのは嫌い?」
私の方を見てまっすぐと告げられた言葉に、私は首を横に振ります
「そんなことは、ないよ」
「そっか。ならよかった」
白い花をできるだけ踏まないように私の元へと来ながら、少年は懐から何かを取り出しました
それはいびつな形をした木片のようで、所々に光る何かが見えます
「あんたにお仲間だ」
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