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春へ
二週間が過ぎて、彼女から一通の手紙が来た。
封を切ると、結婚式の時の写真が数枚と、あの夏の海の写真が入っていた。
ただし、夏の海には雪が降っていた。
おそらく加工したのだろう。
手紙には懐かしい筆跡が並んでいた。
――多佳子へ。
結婚式、来てくれてありがとう!
来てもらえないと思っていたから、本当に嬉しかったよ。
結婚式で使ったマリン・スノーの写真、覚えてる?
私は今でも多佳子を好きだよ。
多佳子と過ごした時間は、真夏に降る雪みたいに楽しかった。
だから、本当のことを言えなかった。
多佳子と離れたくなかったから。
今さら謝っても遅いかもしれないけど、ごめんなさい。
また会えたら、嬉しいな。
マリン・スノーを、一緒に見に行きたいです。
希和子より――
手紙の末尾に、連絡先が記されていた。
私はスマホでその番号を押した。
コール音が数回鳴り、彼女の「はい」という息遣いが聞こえた瞬間、
高校生に引き戻される。
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