第一章転校

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 俺は、春から通うことになった、公立弥和高校新一年生遠一仁郎(とおいち にろう)進学校だが、文学と部活動は活気があり昔ながらの古風ある学校だ。少し古すぎると思ってしまうくらいには古い。新しく学校が変わり心機一転して通う新入生は、桜が舞う中で歩く道は全てが初めてで心が躍り景色一つ一つが彩られる。その中でも一際彩っていた場所が、自分の教室の窓から眺める満開の桜だった。今は、その綺麗だった桜の花びらは散ってしまい枝の茶色が所々あり満開の桜があった時が嘘のようだった。五月の始まりにしては教室が騒がしい、まだまだぎこちない関係をクラスメイトが抱いてもおかしくはない。だが、とある女子生徒の話題でこのクラスは持ちきりだった。もし学校新聞があれば今月の見出しはこれだ、と決めて作ってしまいそうなくらいのスクープだった。そして噂の彼女の名前は、清水愛美(しみず まなみ)と言い、入学して一ヶ月も経たっていないのに先生とクラスメイトからの信頼があり容姿が整っていて、学校の規則遵守を徹底しているような肩までの髪に、キリッとした二重の目の上には真面目を象徴するような眼鏡をかけている。そんなクールビーティーな彼女でも今は、俺の隣で尋問のような質問攻めに面を喰らっていた。 「どうして急に転校しちゃうの?愛美ちゃんはこの学校嫌だったの?何か嫌なこととかあったの?」 髪が肩に掛からないくらい短いショートカットの女の子は、清水の真正面に立ち机に両手を置き質問の答えを待っているように見える。周りにもその質問の答えを興味深く頷き清水を見つめている。多くの質問を受けた清水は少し戸惑いながらも、ゆっくりと丁寧に答え返す。 「家の急な事情で、この街に居れなくなったの、私も残念です。せっかくクラス委員になれたのに・・」 よほどショックだったのか、長いため息と同時に肩を下ろした、そして短いショートカットの女の子も同じようにそうかと言い肩を下げた。俺はそこまで親しくもない、そして興味がないことには感情も動かない。だから俺は余所見をせず机の上にある入部申請する用紙の記入欄を埋める。だが隣の声は再び俺の耳に入り込む。 「それと、弥和高一番のイケメンの川崎先輩からの告白はどう答えたの?」     
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