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車窓にポツポツと雨粒がぶつかり、流線形を描き、どんどんと流れていく。
私はぼんやりと滲んだ景色を眺める。
こんな日は、最高のうたた寝日和だ。
ごとん、ごとんと電車のゆるやかな振動に合わせて、ぷらん、ぷらんと、右へ左へ吊革が揺れている。
それを見る私の頭も小刻みにゆれ、だんだんと視界はぶれていった。
眠気に襲われるときは、いつもこんな感じだ。
視線のピントが合わなくなっていき、
そうするうちに、現実と妄想の線引きが曖昧になり、眠りに、落ちる。
その瞬間。夢と現実の間、ほんの少し、かろうじて意識が爪先だけ残っている瞬間、
私は夢に落ちる自分を朧気に、見つめている。
吊革が揺れている。
そのつり革には、小さな小人(こびと)の首がかかって、電車の振動と共に揺れている。
ゆっさ、ゆっさと、小人の足は揺れている。
女の小人、男の子小人と、バンドマンのような金髪の小人、相撲取の小人(は、吊革の輪っかに肉が埋もれて苦しそうだ。と言っても彼らは死んでいるのだけれど)
中でも人気なのは、小さな少女の吊革だ。
白い襟つきシャツに、赤いベルトのついた膝丈のピシッとしたプリーツスカート。
白い、三つ折り靴下。
黒いエナメルシューズ。
ガッシリとしたスポーツマンタイプのつり革の方が、つかみやすいのに、
その柔らかくすべすべとした少女の小人の足は、老若男女全てに人気だ。
でも、今日は雨の日曜日。
電車は空いていて、みんな散り散りにベルベットのような肌触りの椅子に腰かけている。
眠る人、しゃべるひと、スマホを見る人、本を読む人びとの中、
ぼんやりと、私は揺れる少女の小人のスカートの中身を見つめて、
あのスカートの影の中の下着の色について、妄想するうちに、うとうとと眠りに落ちていく……
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