Invention

11/15
前へ
/15ページ
次へ
「じゃあ、僕が今ここにいられるのは、麗子博士のお陰なんですね。ありがとうございます」 「お礼なんていいのよ。私がいいと思ってそうしたんだから。実際、この一年間、一緒に研究してきたけど、あなたの能力は素晴らしいわ。これからもずっと一緒に……」  愛を告白するなら今だ! 僕は勇気を振り絞る。 「れ、麗子博士。す、すす、す……」 「す?」 「す、西瓜(すいか)食べたくありませんか?」 「酢イカ? お酒でも飲むつもりなの? 私は酸っぱいものは苦手なんだけどな」 「酢イカじゃなくて西瓜です」 「ああ、西瓜ね。でも、こんな夜中じゃ買いにもいけないし、そもそも今は西瓜の時期じゃないし」 「そ、そうですよね」 「まあ、冗談はそれくらいにして、研究がんばりなさい。私はこれで帰るから」 「お疲れ様でした」  僕はカツカツとハイヒールの音を響かせて去ってゆく麗子博士の後ろ姿を見ながら、ガックリと肩を落とした。  それからも僕のチームの研究は続いた。山あり谷ありだったが、一年半の時間をかけて、ようやく研究成果としての機械の試作品が完成した。僕は完成したばかりの大きな球状の 機械を立ったまま見つめる。そんな僕の隣には、麗子博士が立っている。 「ついに試作品が完成したのね。おめでとう」  麗子博士も機械を見つめながら言う。     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加