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「じゃあ、僕が今ここにいられるのは、麗子博士のお陰なんですね。ありがとうございます」
「お礼なんていいのよ。私がいいと思ってそうしたんだから。実際、この一年間、一緒に研究してきたけど、あなたの能力は素晴らしいわ。これからもずっと一緒に……」
愛を告白するなら今だ! 僕は勇気を振り絞る。
「れ、麗子博士。す、すす、す……」
「す?」
「す、西瓜食べたくありませんか?」
「酢イカ? お酒でも飲むつもりなの? 私は酸っぱいものは苦手なんだけどな」
「酢イカじゃなくて西瓜です」
「ああ、西瓜ね。でも、こんな夜中じゃ買いにもいけないし、そもそも今は西瓜の時期じゃないし」
「そ、そうですよね」
「まあ、冗談はそれくらいにして、研究がんばりなさい。私はこれで帰るから」
「お疲れ様でした」
僕はカツカツとハイヒールの音を響かせて去ってゆく麗子博士の後ろ姿を見ながら、ガックリと肩を落とした。
それからも僕のチームの研究は続いた。山あり谷ありだったが、一年半の時間をかけて、ようやく研究成果としての機械の試作品が完成した。僕は完成したばかりの大きな球状の
機械を立ったまま見つめる。そんな僕の隣には、麗子博士が立っている。
「ついに試作品が完成したのね。おめでとう」
麗子博士も機械を見つめながら言う。
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