Invention

12/15
前へ
/15ページ
次へ
「ありがとうございます。あとは、実験してみて、細かい修正を入れていく作業に入っていきます」 「そう。それで、自信のほどは?」 「何とも言えませんね。何せ、人間の感情を操ってしまう機械です。理論上は、この機械の中に入って特殊な音波と電波を受けた人間は、中から出てきて最初に見た異性を好きになるはずです。ですが、人間の感情は未知数です。果たして、理論どおりに行くかどうか……」 「あら、ずいぶん弱気なのね」 「そりゃ、弱気にもなりますよ。博士や先輩に助けてもらったとはいえ、僕みたいな凡人が作った機械ですからね」  僕の言葉に、麗子博士は深く溜息を吐く。 「いい? 前にも言ったと思うけど、私はあなたを信頼しているし、期待もしているの。今回の研究を始めてから、誰よりも頑張ってたのも知ってる。少しは自信持ちなさいよ」 「ありがとうございます」  麗子博士の言葉が心に染みて、思わず涙が出そうになる。僕はこっそり顔を背けて、白衣の袖で目頭に溜まった涙を拭った。  夜、一人で機械の調整をしていると、いつかのように麗子博士がやって来て、僕に缶コーヒーを差し出す。僕は白衣の裾で手についた油を拭い、缶コーヒーを受け取った。 「ねえ、こんなステッカー作ってみたの。この機械に貼ってもいいかしら?」     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加