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「ありがとうございます。あとは、実験してみて、細かい修正を入れていく作業に入っていきます」
「そう。それで、自信のほどは?」
「何とも言えませんね。何せ、人間の感情を操ってしまう機械です。理論上は、この機械の中に入って特殊な音波と電波を受けた人間は、中から出てきて最初に見た異性を好きになるはずです。ですが、人間の感情は未知数です。果たして、理論どおりに行くかどうか……」
「あら、ずいぶん弱気なのね」
「そりゃ、弱気にもなりますよ。博士や先輩に助けてもらったとはいえ、僕みたいな凡人が作った機械ですからね」
僕の言葉に、麗子博士は深く溜息を吐く。
「いい? 前にも言ったと思うけど、私はあなたを信頼しているし、期待もしているの。今回の研究を始めてから、誰よりも頑張ってたのも知ってる。少しは自信持ちなさいよ」
「ありがとうございます」
麗子博士の言葉が心に染みて、思わず涙が出そうになる。僕はこっそり顔を背けて、白衣の袖で目頭に溜まった涙を拭った。
夜、一人で機械の調整をしていると、いつかのように麗子博士がやって来て、僕に缶コーヒーを差し出す。僕は白衣の裾で手についた油を拭い、缶コーヒーを受け取った。
「ねえ、こんなステッカー作ってみたの。この機械に貼ってもいいかしら?」
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