Invention

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 僕は驚いて、思わず大きな声を上げた。僕たちの研究はいくつかのチームに分かれて行っていて、各チームにチームリーダーがいる。だけど、通常、チームリーダーはもっと経験を積んだ助手が行うものだ。僕はまだ長谷川科学研究所に入所して一年足らずの新米助手だ。それにも関わらず、先輩助手を差し置いてチームリーダーになるのは、いくらなんでも早すぎる気がする。そんな僕の気持ちなどお構いなしに、麗子博士は言葉を続ける。 「これでも私、あなたのことを信頼してるし、期待もしてるから。まさか、チームリーダーを引き受けないなんて言わないわよね?」 「い、言いません言いません」 「だったらいいわ。それでね、新しい研究のテーマだけど、やっぱり世の中の問題を解決するようなものでないといけないと思うのよ」 「世の中の問題を解決ですか……」 「そうよ。今、世の中でどんなことが問題になっているかしら」  僕は考えてみる。最初に思いつくのは、地球温暖化だろうか。だけど、温暖化対策は既にずいぶん研究が進んでいる。それに、僕がリーダーとして研究するには、少しスケールが大きすぎる。  次に思いついたのは、日本経済の不況だ。だけど、僕は何も経済学的な研究をしようというのではない。あくまでも工学的な研究、どちらかというと発明をしようとしているのだ。そういう意味では、日本経済を良くする機械など想像するのも難しいし、研究を成功に導く自信もない。     
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