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麗子博士はそう言うと、白衣のポケットから缶コーヒーを取り出して渡してくれる。僕はキーボードから手を離してそれを受け取り、栓を開けてから一口啜った。口の中にコーヒーのほろ苦さがいっぱいに広がる。隣で麗子博士も自分の分の缶に口を付けている。
「ねえ、高澤くん。君は大学二年のときの大学祭のことを覚えてる? まあ、そのとき私は四年生だったけど」
「ええ、覚えていますよ。今でもハッキリと」
「あの時の高澤くん、格好良かったよ」
麗子博士のその言葉に、僕は気恥ずかしい感じがして、思わず俯いた。
僕の大学二年生のとき──つまり僕にとって二回目の大学祭、そこで事件は起こった。麗子博士は前年の大学祭のミスコンで、見事にミス東都大学に選ばれたが、その年も史上初の二年連続優勝を目指してミスコンに参加していた。元々、麗子博士は美人として有名でファンもそれなりにいた。だけど、前年のミスコン優勝で、ファンの数も一気に増えていたから、二年連続優勝はほぼ間違いないと思われていた。
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