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イチゴを使ったスイーツをショーケースの中に見つめ、桜蔵の大きなブルーグレーの瞳が輝いている。
「珪ちゃん、選べないー」
にこにこと、ショーケースを見つめている。時間がかかるとふんだ、珪は、ため息をついてスイーツを見渡した。
「じゃあ、一番左のヤツを3つ」
「あー!ダメ!ちゃんと選ぶ!」
珪の選択を却下して、笑顔が真剣な顔になり、桜蔵はショーケースの中を見つめた。そして、3分後、下した決断はーーーー。
「…………い、いちばん左の、3つで……」
にこやかな店員に見送られ、いつものクールな珪とそして、やや不満げな桜蔵は、Beansビルを後にした。
輝く表通りを裏路地へと入って、桜蔵が、手土産のスイーツが収まっている紙袋を、実に不服げに見つめた。
「珪ちゃんに勝てなかった……」
「何が?」
「結局、珪ちゃんの選んだヤツ買ってるしぃー」
さらに、珪はそれを一瞬で判断した、それが桜蔵の悔しさの原因だった。
「役に立ててるみたいで、よかったよ」
珪が返したこの一言に、桜蔵は、立ち止まった。
「桜蔵?」
珪が振り返ると、桜蔵は、難しい顔をしていた。
「……珪ちゃん、俺、珪ちゃんの役に立ってる?」
そう言って、珪を見る桜蔵の顔に、不安が滲んで見えた。
珪は、桜蔵との数歩の距離を縮めて、頭にポンと手を乗せた。
「言葉のあやだろ?」
「だけど……」
「お前は、俺が役に立つから相棒してんのか?」
桜蔵は、何かに気づいたように目を丸くして珪を見上げ、そして首を横に振った。
「な?」
珪が、ポンポンと再び桜蔵の頭を撫でた。桜蔵がそれを、照れ臭そうに振り払う。
「縮むからやめて」
「ハイハイ」
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