B:Buddy

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 この人の役に立つーーーーそんなことを、桜蔵が考えるなんて、珪には想像できなかった。  確かに、桜蔵はストレートに人を誉めるし、スゴいと、尊敬している。  しかし、それは喜びで、不安だとは思わなかった。 「(なぜ……ーーーー?)」  思い当たることはある。4区ーーーーそこに、自分たちとの隔たりを感じている可能性はある。 「珪ちゃん、入んないの?」  桜蔵が、(アキ)宅の玄関を開けて待っている。珪は、頭に浮かんだ考えを隅へと追いやった。  室内に入ると、コーヒーの用意をしているようで、馴染んだ香りが二人の鼻腔をくすぐる。  桜蔵が、嬉しそうに微笑む。 「わぁ、この匂いは、あのコーヒーだ。さすが、ミニアキー」  ミニアキがいるキッチンへと駆けていき、作業をご機嫌で眺めている。  それを見つめながら、珪は、ソファーに座った。 「(桜蔵が、余計に幼く見える……)」  ミニアキは、あくまで冷静な表情と雰囲気で、トレーに乗せたコーヒーを運んでくる。そして、その横に、期待を裏切らないくらいに心躍らせている桜蔵がいる。  珪は、二人を見て小さく笑った。 「あー!ちょっと、珪ちゃん、何を笑ったのー!」 「何で自分が笑われたと思ったんだよ?」  実際、桜蔵を笑っていたわけだが、堂々と誤魔化すと、桜蔵は、言葉に詰まった。おとなしく珪の隣に腰を下ろす。  ミニアキが、手土産のスイーツの箱を開けている。それを見て、桜蔵は、思い出したように声を上げた。 「そういえば、珪ちゃん?Beansビルで珪ちゃんを見てた人って、キャスケット被ってて、丸い感じの目をした男の人?」 「え?」 「ショーケース越しに見えた。良く言えば諦めない、悪く言えば、しつこい雰囲気の人」 「まだいたのか」 「気づかなかったのも、無理ないよ。珪ちゃんのことじゃなくて、俺の方見てたからねー」  スイーツを皿に乗せて、ミニアキは二人に差し出しながら尋ねた。   「監視されてたんですか?」  答えたのは、桜蔵だった。 「監視っていうか、ストーキングっていうか」
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