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最高の彼氏
バジルの芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。細めのパスタがオリーブオイルで輝いている。レストランの一皿のような料理を、自分の部屋で食べられるって幸せだ。私は緑色のソースが絡んだパスタをフォークで巻き取り口に運んだ。
「んーっ、美味しいっ!」
料理人の彼の作ってくれたバジリコスパゲティは絶品だ。
「よかった。ふみちゃんの美味しい顔、大好きだから」
私が一口目を食べるのを待っていた彼も、ようやくパスタをフォークに巻き付けて口に運んだ。 口を動かしながら、何口目かのパスタをフォークに巻き付ける。飲み込んだら、すぐに次のパスタを口に入れられるように。幸せのループだ。
フォークを口に入れたまま笑いかけると、彼は眉も目尻も下げて顔全体で微笑み返してくれた。その素敵な笑顔は私にだけ向けられているのだと思うと、体の中がうずうずしてじっとしてはいられなくなる。
「何か飲む?」半分腰を浮かせて彼に聞く。
「冷蔵庫に、イチゴのワイン入れておいたから、持ってきてくれる? 今日は仕事じゃないよね? 明日の勤務は何?」
春だから、とイチゴのワインを持ってきてくれるだけじゃなくて、看護師をしている私の不規則な勤務にまで気を配ってくれるなんて、なんて優しい人なんだろう。
「明日は準夜勤で、夕方から。朝はゆっくりできるから飲んでも平気だよ」
浮き立つ気分のままに、勢いよく立ち上がったら、楕円形のテーブルに太ももをぶつけてしまった。ガツっと大きな音がして、テーブルが揺れる。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫大丈夫」と返事をしてキッチンに行こうとすると、彼が笑いを含んだ声で引き止めた。
「ふみちゃん、スマホがポケットから落ちそうだよ」
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