第一章

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第一章

 時は平安、後一条帝の御代――。  (あぶら)(こう)()沿いの(わたな)(べの)(つな)邸では、朝から使用人たちが騒いでいた。 「今日は朝から風もないのに()(ちょう)がばたばたと倒れてしまいよりますわ」 「こちらは()()が勝手に巻き上がったり落ちたりしてますえ」 「()(しとみ)もきいきいとうるさいったらかないしまへんなぁ」  そう広くはない邸内では調(ちょう)()(るい)がひっきりなしにがたがたと音を立てており、とにかくやかましい。まるでそこだけ夏の嵐がやってきたような様相だ。  庭の(あんず)の木の枝という枝にたわわに実った青い実が、風にあおられてゆらゆらと揺れ、いまにもぼとぼとと落ちそうだ。  昨夜からの()(ぬか)(あめ)は明け方頃に止んだが、空は鉛色の雲で覆われている。地面は雨でそこかしこが濡れており、空気も湿っていた。 「なんでこないなことになったんやら」 「こらあかん。(おり)(びつ)が勝手に井戸に飛び込んだわ」     
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