17人が本棚に入れています
本棚に追加
<1>
「---この命もう要りません。お返しします」
はっきりと、口に出してそう言った。
もう生きているのは嫌だ。
数少ないけど、お世話になった方にはゴメンなさい。
しばらく前に喧嘩別れをした両親には……話しても分かってもらえなかったから、仕方ない。
ただしクズみたいな上司2人。テメーらは別だ。後で祟る。
---でももうわたし、限界です。
夜の県道。
地方のため、車の通行量はさほど多くない。
誰も巻き込まないで済みそうだ。
ヤケクソな意識の中、何かが視界を横切った気がした。
咄嗟に大きくハンドルを切る。
---あ、これで終わりだ。
一拍のタイムラグの後に轟音と、全身にとんでもない衝撃が来て。
……そのまま意識を失った。
コンマ数秒の、急速に暗転する視界の中で。
真っ白にヒビの入ったフロントガラスに、赤いシミが一筋広がるのがほんの僅かだけ見えた。
ああこれは死んだな、と思った。
最初のコメントを投稿しよう!