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「寿命……譲渡? なんですかそれ」 『寿命遺産というのはだな。病気や事故などで本来あるべき寿命より早くに死んでしまう者がおるじゃろ』 「まぁ。いますね」 『そういった者たちから、天寿を全うする者と比べて不公平だという声が出ての。救済措置として最近始まった制度なのじゃ』 死後の世界にも制度とかあるんだ?! あの世も意外と世俗的である。 『死んだ者から、本来なら生きられる筈だった期間の一部を、任意の生者に譲ることができるというものじゃ。勿論、長生きし過ぎる者がいては混乱をもたらすので、いくつか制限や条件があるがの』 誰かがわたしに寿命を譲ってくれたというわけか。 でも待てよ。 最近死んだ知り合い。しかも余命を譲ってくれそうなほど仲の良かった人。 ……そんな人、いたっけ? 「わたしに寿命を分けてくださったというのは誰なんですか」 『それは言えぬ』 「はぁ?!」 『寿命を与えた者が誰かを知ってしまうと、相手に罪悪感や因縁が出来てしまいかねん。現世でも匿名で遺産を寄付したりする者がおろう?』 どこかしらの富豪が匿名で遺産を千万億万単位で寄付したとか。 たまにニュースとかで聞くよね。 そのお金わたしにくんないかなとか、誰でも思うよね。みんな思うよね。 「……分かりました。で、あとどれだけ生きられるのですか」 『お主に譲渡された期間は』 既に死のうとした後のこと。 大して期待をしていなかったわたしに、カミサマは一瞬おいて静かに言った。 『1日じゃ』 「1日ィィィ!!!」
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