第3章 慰めて

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何よ。 いつも私の事、虐めてばっかりの癖に。 「ひっ……ひっく……」 何年振りだろう。 人の前で、こんなに泣いたのは。 「な、なんで社長は……今だけこんなに優しいんですか?」 「今だけが余計だ。」 もうダメだ。 「うっ……ううう……」 声も出てくる。 「もう大丈夫です。ありがとうございます。」 私は、社長から離れた。 「大丈夫そうには、見えないな。」 そう言って、社長は私の手を繋いだ。 「今から、俺の家に来ないか?」 「ど、どうしてですか?」 「俺、おまえの事気に入っているんだ。」 ありきたりの誘い文句。 こんな時に卑怯だ。ズルい。 でも、泣いている私には、冷静な判断はできなくて。 手を繋いだまま、私は社長の家に、誘われたのだった。
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