博多の街、大人の淡い物語・・・

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 目鼻立ちの整った美人には違いないのだが、どこかその中に愛らしものを感じる。年の頃は、落ち着いた雰囲気を足してみて40代前半といったところだろうか? 50代前半の私からすれば、若い。 「来週ですね……はい、よかですよ」  私はあっさりと白旗を揚げ、【私の標準語】を話すことにした。 「ガットの種類やテンションは、お任せします」 「では、ここにお名前と電話番号ば記入してください」  レジを乗せた机の空きスペースに、メモ用紙サイズの簡素な記入票を渡してお願いをする。 「……」 『結婚指輪はしよらんみたいやな……』  それとなく細く長い指に目が向いてしまった。 「では、お願いします」 「はい、預かりますばい」  ありがとうございましたと艶やかな後ろ姿へ言葉を届け、外を歩く姿をほんの少しだけ視界に入れることができた。 『モデルか?』  彼女の歩く姿を見て、私はそう思った。 「……」  神森昌子。流れるような字体で書かれたその名前。こんな気分になったのは、これで二度目だった。 「……」  後ろを振り返る。棚の上にある写真立ての中の笑顔に申し訳ないような気分になって、私は目を逸らしてしまった――。  2 「おー、栞。どうしたとね?」  自宅マンションでテレビを見ながらビールを飲んでいると、娘から久々に電話がかかってきた。  短大を卒業したあと、就職の為に東京へ行ってから、もう一年以上が経っていた。     
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