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高砂の新婦席にて
先妻様――美紗子さん。私は、とうとう花嫁姿で高砂の新婦席に腰を下ろしてしまいました。聡一郎さんの親友で司会を務めていただく、青年会議所理事長の岡さんが、開宴のご挨拶をなさっています。私と聡一郎さんの結婚披露宴が、いよいよはじまりました。今日は、大安吉日。爽やかな五月晴れの天気にも恵まれています。私は、旧姓渡辺あゆみという名前と同じくごくごく普通な、二十六年と七ヶ月の半生をただ漫然と過ごしきてきたのに、こんなに幸せな思いをしてもいいのでしょうか?
新郎席には、酒造会社の若社長だけに、紋付羽織袴姿の板についた聡一郎さんが、鷹揚に腰を下ろし、見る人の心を包み込むような笑顔を見せています。美紗子さん。新郎新婦の間に設けられた特別な席には、聡一郎さんと同じ出立ちの淳一郎君が、背筋をピンと伸ばしてお行儀よく腰を下ろし、とても小学二年生とは思えない凛とした顔つきを見せていますよ。
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