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……話し声が聞こえて、目を開けた。
課長が起きていて、
「ああ、もう戻る。心配をかけて、すまない」
と、電話で話していた。
「……皐月課長、」
上体を起こして声をかけると、電話を切って振り返り、
「……仕事が立て込んでるようだから、社に戻る」
と、言った。
「わかりました。ですがもう、体の方はいいんですか?」
立って行って横に並び尋ねると、
「ああ…」応えて、「おまえにも、気をつかわせて悪かったな…」と、微笑んだ。
「……そんなのは、いいんです」
再び自分にはどうにもできない、情けない気持ちが込み上げた。
「いいから、さっきも話したように俺に頼ってくださいよ……そんな風に気丈にいられたら、俺がそばにいる意味もないじゃないですか……」
ふーっとまた、ため息がこぼれ出ると、
「……そんなことはない、」
と、彼が口にして、
「おまえがいてくれて、助かったから」
そう続けた。
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