放浪

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放浪

小鳥の鳴き声で目がさめる。 上には天井は無く、青い空が広がっていた。 そういえば、昨日家を追い出されたっけな。 のっそりと体を起こし、大きく伸びをする。 近くの小川で顔を洗い、ようやく頭がスッキリした。 さて、これからどうするか? 持ち物はゼロ。 頭は良くない。 手先も不器用。 あるのは頑丈な大きい身体だけ。 今更自分が何もできないことに気がつく。 考えていると腹が鳴った。 昨日から何も食べていないんだった。 近くに果実が成っていたから、取って食べる。 まずい。 とても食べれたものじゃない。 食欲は湧き上がってくる一方だ。 とにかく、移動しよう。 少し歩けば、家の一軒でもあるかもしれない。 何か食べ物を恵んでもらおう。 だが、家が見つかるどころか、周囲の景色が森に変わっていく。 これでは、食べ物への望みはないだろう。 母親の作る味の薄いスープが恋しい。 すると、後ろから馬の足音が聞こえてきた。 振り向くと集団が走ってくる。 ちょうど良かった。 ようやく食べ物にありつけそうだ。 集団を止めようと手を振るが、スピードを落とす気配がない。 慌てて道端に避難すると横を猛スピードで駆け抜けていく。 「馬鹿野郎!邪魔だ!」 集団の一人が去り際に俺に罵声を浴びせる。 身なりから見て盗賊のようだった。 絡まれなくて良かったと思うと同時に、馬鹿呼ばわりされたことに腹が立ってくる。 とりあえず、盗賊の向かった方向に再び歩き出す。 早く腹を満たしたいものだ。
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