助太刀

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助太刀

しばらく道なりに進むと怒鳴り声が聞こえてきた。 おそらく先程の盗賊だろう。 気になったので少し駆け足気味に声のした方へ移動する。 近くに来るとやはり声の主は盗賊だった。 馬車を集団で囲んでいる。 商人か何かだろうか? 一人の男が盗賊に応戦している。 だが、相手は十数人だ。 一人でどうにかできる数ではない。 あまりやりたくないが手助けをするか。 「なあ、ちょっとあんた」 盗賊の一人に声をかける。 「あん?なんだ、さっきの木偶の坊…」 盗賊の言葉が終わる前に殴り飛ばした。 「てめえ、何しやがる!」 矛先がこちらに向いた。 盗賊たちが襲いかかってくるが、片っ端から殴り飛ばしていく。 剣が身体に当たったが剣の方が折れた。 「なんだこいつ!馬鹿みたいに強えぞ!」 盗賊が警戒して距離を取る。 攻撃してこないので、こちらから思いっきりタックルをかます。 「ぐあっ!」 何人かが吹っ飛び、呻き声を上げる。 「くそっ!相手が悪い!ずらかるぞ!」 盗賊たちは慌てて馬に乗り、逃げていった。 その後ろ姿を見ながら、ほっとため息をつく。 「助けていただき、ありがとうございました」 声のした方を振り向くと先ほどの男が立っていた。 見た目は若く、おそらく自分よりも年下ではないだろうか。 「僕はランゲルと申します。商人を生業にしていて、各地を旅している者です」 口調は丁寧で、流石は商人だといった所か。 「運悪く、盗賊に目をつけられてしまって…あなたの助けがなければ、殺されて商品を奪われていたでしょう。改めて、心より感謝を申し上げます」 ランゲルは深々と頭を下げた。 「いやいや、俺はそんなに感謝される人間じゃないよ」 感謝され慣れてないので、たじろいでしまう。 そんな時、ぐぅ~と腹が鳴った。 忘れていたが、食べ物を探していたんだった。 「よければ何か食べていきますか?」 ランメルは笑って、そう言った。 せっかくのご好意に甘えるとしよう。
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