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過去
「ところでジョセフさんは何故こんな所に?見たところ何も持っていないようですが…」
食後のコーヒーを飲んでいる時、ランゲルが尋ねてきた。
あまり本当のことは言いたくないのだが、おそらく彼には嘘は通じないだろう。
あまりにもじっと見つめられるので、正直に話すしかない。
「その、なんだ…親父から勘当されてな…」
「なるほど。それで着の身着のまま家を追い出されたんですね」
ランゲルはすぐに事情を察したようだ。
こちらが言いたくないことをズバッと声に出した。
「えー、なんでなんで?」
リズが話に割り込んでくる。
何も言わないが、リゼにも興味津々に目を向けられる。
「…親父は鍛冶屋でな、俺も後を継ぐために修行してたんだ。けど、俺は親父のように要領が良くないから、何年やってもまったく上達しなかったよ」
「それが勘当されることと何の関係が?」
ランメルが不思議そうに尋ねる。
「俺には歳の離れた弟がいるんだ。弟も鍛冶の修行を始めたんだが、あいつには才能があってな、すぐに習得しちまったよ。それに比べて俺は何の才能もないことに嫌気がさしてな…やる気もなく、何もせず時間を浪費していたら、親父がブチ切れて勘当されたんだ」
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