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トゥルッ……トゥルルル、ルル……トゥルルル、ルル……
呼び出し音が鳴る間、オレは居間の電話台の上で、ナンバーディスプレイの液晶部分が薄く光っている光景を想像した。
携帯すら持っていない独居老人。
固定電話はFAX付きで、ほとんど使っていないが、何十年もNTTに高い固定料金を払い続けている。
電話機の脇にはメモ帳とボールペン。
メモ帳は、近所のタクシー会社の物で、呼び出しの電話番号とロゴがプリントされている。
電話機の後ろの壁には銀行のカレンダーと壁掛け時計。
息子の嫁と同居した日には、『折角の豪邸にそんなカレンダー貼らないで』とか言われるんだ。
着信音が途切れる。
受話器が上がる音か?
それとも、留守番電話の応答メッセージに切り替わる音か?
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