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09.照らされる地獄と闇に溶ける奈落
誰かの叫び声で目が覚める。
なんだ、この空間は?
空気が淀んでいて……えらく臭い。
糞尿の匂いと……腐敗臭だ。
ゆっくり立ち上がる。
方角が分からず、手を伸ばす。壁に当たる。
叩いてみる。響き方が独特だ。
そうだ、これはスタジオ……防音室の壁だ。
壁伝いに歩く。
パキパキと何かを踏んでは弾ける不快音が反響する。
足の裏の痛みで、靴を履いていないことを想い出す。
そうだ。
婆さんと黒髪にやられたんだ。
殴られた瞬間を想い出すと、途端に頭に激痛が走った。
人間の記憶とは都合の良いものだ。
後頭部を触ると、傷口はカピカピに乾いていた。
気を失って、相当な時間が経ったのだろう。
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