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「あんた、いつまで佐伯君に夢見てるわけ?小さい頃から一緒だったのに今まで何も無いとか、ガキにも程があるでしょう」
園瀬は何かを言おうとしてやめる。結局、彼女は何も言わずに立っていた。多田も木下も黙って山田に抗議の視線を向けている。
彼女たちが移動教室で去った後、山田は一人、教室の中に佇んでいた。移動教室など最早、彼女にはどうでも良くなっていた。
不意に笑いがこみ上げる。空っぽの教室に、彼女の声が、噛み締めた笑いがこだまする。山田は何処から湧いてくるのかも、解らぬ笑いに身を任せ、目に涙が浮かぶほど、ついに大声で笑いだす。
そうして彼女はいつまでも、笑い続けているのであった。
山田真奈は恋をした。14歳の春の日に。
そうしようと、決めたのだった。
山田は女より男が好きだ。
だから相手は男と決めた。
それ以外、なにも決まっていなかった。
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