ビキニ

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「確かにそれもそうかも。さすが、萌は大人だね」 彼女は出来るだけ、羨望の眼差しを彼女に向けてそう言った。自分でも、何をしているのかよく分からなくなっている。早く、この会話を切り替えてしまいたい。 「ああ、でもさすがに髪型は変えたいかな。二つ結びとか、ポニーとか、私がよくやるやつじゃない、なんか、こう、落ち着いてみえる髪型してみたい。あ、いっそ萌みたいに短くしてみるのも…」 山田の言葉を遮るように、予鈴が教室にこだまする。 「じゃあ、休み時間に色々二人で考えよ。あと、真奈は長めの方が絶対似合う」 そう言って園瀬は席に着く。教室の窓の隙間から、春風が生ぬるさを連れてくる。風にさえ感じた嫌悪、彼女は矛先を静かに探す。 それから時折、彼女たちは恋についての話をする。といっても、ほとんど山田の独白だった。時折、同じクラスの多田久美子や、木下優なんかも会話に混ざって、自分たちの恋についてを議論する。 相手のタイプ、苗字と自分、子供の数やその名前。行きたいデートのスポットに、言ってみてほしいセリフや言葉。園瀬だけは会話に混ざらずに、はたから聞いて満足をしていた。 「ねえねぇ、園瀬さん。ところで佐伯君とはどうなのよ」 時折、多田がそう言って、園瀬に水を差し向ける。 「何にもないって、小学校から、まともに話してないんだもん」 園瀬が困ったようにそう言い笑う。それでいつも会話は終わる。その度、山田はいわれもない嫌悪の存在を、胸の中に認めたのだった。それは、奥歯に挟まった肉の筋か何かのように、彼女の頭を煩わせた。
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