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久し振りに電車に乗った。街に出るのもいつぶりだったか。そんなことを、園瀬がポツリと呟いた。
「萌、いつも本ばっかり読んでるからだよ」
山田は言った。
「そうだよ園瀬さん。女の子なんだからもっとさー」
ベンチシートの足を揺らして、多田はそう呆れたように園瀬に言った。木下は、和やかに笑って揺れている。
「女の子ってなによ」
園瀬は皆にむくれて見せる。そうして、皆声を合わせて笑う。電車は街へと滑り込む。彼女たちはショッピングセンターを目指して歩く。四人で並んで、透明な日差しと街路樹の、木陰を横断しながら夏へと進む。ショッピングセンターについた頃、すでに皆汗ばんで半分だれていた。
「クーラー最っ高!」
「ほんと、生き返るわぁ」
思い思いに口に出す。
「ねぇ、どんな水着買う?」
「どうしよっかなー」
そんな会話を弾ませながら、水着専門の店へと向かう。
実のところ、山田真奈はこの日を待ち望んでいた。
今日の計画をいつバラそうかと見計らい、水着店の前で前に出て、くるりと振り向きこう言った。
「私ね、黒のビキニ買うの!」
皆、豆鉄砲で見事に撃ち抜かれたようだった。山田はその様子を見て満足感に一人で浸る。事の発端は、ロクでもない事だった。ただ、近所の河川敷に集まって、ガキどもが黒ビキニの女のエロ本を、皆で回し読みしていたからだ。
「そういうのって、もうちょっとスタイルも年齢も大人になってからじゃない」
はやくも銃創を塞いだ多田が、笑って言った。園瀬と木下も、適当な同意の言葉を述べている。
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