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突然だが、田辺さんという、70を超えた老人が、同僚にいる。年金だけでは暮らしていけないのだろう、老体にムチ打ち毎日頑張っている。だが常に消沈し、口癖の様に、
「家に帰ってもひとりぼっちだ」
「何の楽しみもすることもない」
「あとは死ぬのを待つばかりだ」
などとこぼしているので、
「これ、あげるよ。こんなもんでも持ってりゃあさ、多少の救いにはなるって、きっと」
と、飛んできた宝くじを差し出してやった。
すると・・・
その、当選番号発表の翌日から、田辺さんは無断欠勤を始め、忽然と姿を消した。心配した会社の人間が住んでいたアパートを訪ねたが、もぬけの殻だったという。まさかそんなことあり得ないとは思うが、ほんのちょっとだけ、匂う。さて、みなさんはどう思いますか、あの宝くじと、田辺さん失踪との相関関係。これまでの会話から得た、数少ない情報を頼りにして、目下、田辺さんの行方を、勝手に独自に興味津々に血眼に捜索中。と、同時に、
“「72歳の男はどこへ消えた。ドキュメント、田辺嘉男の行方を追え!!」
もしもの時の、分け前への執着も含め、近日堂々執筆開始!!”
48歳の春、遂に生きることと書くことが、結びついた。
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