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それから数百年の月日が流れると私達が住む霊峰に全身傷だらけの青年が迷いこんできた。
「俺はエンテ王国の勇者グリームという。どうかここで傷を癒やすことを許してくれないだろうか」
霊峰に人が現れたのは私以来である。
しかし、私の時とは違ってこのグリームという青年は傷を癒やしに来ただけという。あの結界を通って来たということは自然力を操れるということに他ならない。
「では私の家で治療をしましょう」
結局根負けした私は家の中へ案内し、客人用……といっても他の女仙人2人をたまに泊めるだけの簡素な寝床でグリームを寝かせた。
いたるところにある傷を自然力を用いて塞ぎながらしばらくの間、どうしてこのような傷を負ったのか。その経緯を聞いていた。
「俺の力及ばずといったところだ」
魔王と直接対決したが剣術の技量において圧倒的なまでに差があったらしい。私も多少は武器の扱いを心得ているので何か教えられることはないかと聞いた。
「あなたのような少女に武器を扱えるようには見えないが」
「修行中の身ではありますがそれなりの技量はあると自負しております。一度だけ私の素振りを見てあなたに教示できそうか判断してください」
「……わかった」
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