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「何故じゃ、貴方がなぜ魔流動を…その技を何処で」
今彼の眼には全身を血液が流れるように魔力が巡っている様子が見えていた…自分はそんな技を教えていないのである。甚だしい程の不気味さを覚える。咄嗟に後方へ跳躍し突進から免れるが追撃の手が無い筈がなく、掌底から続けて繰り出される回し蹴りを間一髪で避けきりどうにか体勢を立て直す。姿勢を低く屈め足を払い、襟を掴み取り相手の体ごと捻り投げ飛ばす。螺旋状に回転し跳んでいき……意識は暗転した。
「しかし…制御しきれていない事がまだ救いじゃな…。やはり自我を無くし暴走しただけじゃったか」
少し残念そうに呟くのであった。
(お坊ちゃん、お坊ちゃん…。意識はあるかい?)
「……」
頭の中に声が聞こえてくる、耳で音として届くのとはまた違う…思念が直接頭に響く感じがする。
「誰だっけ」
(お坊ちゃん、私ですよ。友達になったではありませんか、闇の精霊です。)
「お、お前どこにいるんだよ」
昔、3年前ぐらいに突然現れたやつか…今まで絡んでくることは無かったのに…。それに魔力感知でも捉えられてないぞ。
(お坊ちゃんの中ですよ。詳しく言えば左眼の中ですね)
「そ、そんな事が…」
(現にあれから魔力の扱いが如何程か楽になったでしょう?)
確かにあれから魔力操作がしやすくはなっていた。ここ数年の急成長はそのお陰でもあったのだ。
(少しでも私のことを認める気になりましたかな?)
事実恩恵は受けているので無下にする事は出来なかった。しかし、いつも通りの彼ならば怪しさから容認する事は無いはずであった。いつも通りであれば……今、彼の頭の中からは疑いの心が隠されるように消えて行くのであった……。
「これからも宜しくね」
(勿論ですとも、よろしくお願い致しますよ。オボッチャマ…)
意識は闇に沈んだ。
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