何を返すか

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 もうすぐ、ホワイトデーだ。  さぁ、どうする?   バレンタインデーの日から、俺の頭はその事で占められていた。  なんと俺は、高校に入学してから大好きだった神山千代子にチョコレートをもらってしまったのだ。  すぐに 「俺も君が好きだった」  と言うべきだったのだろうが、日本にはホワイトデーという習慣がある。その時に、何か感動的なお返しをして神山千代子を喜ばせたい。そう思って、ずるずると今日、ホワイトデー三日前を迎えてしまった。  大学生の兄貴に相談したら、 「童貞をやれ。ホテル代は貸す」   と言う仕方のない答えがかえって来た。こいつに相談した俺が馬鹿だった。  お袋に相談したら、   「真心がこもっていたら、何でも嬉しいの」 との事だった。それじゃ駄目なの!!小学生じゃあるまいし、キャラクターものの鉛筆一本貰って喜ぶ高校二年生がどこにいる。  印象に残るホワイトデーのお返しを贈り、神山千代子と仲良くなりたい。出来ればお付き合いしたい。   そうこうしている間に、ホワイトデーになり、いいアイディアが浮かばなかった俺は、GODIVAのチョコレートを買ってお返しとする事にした。  授業が終わり、帰ろうとした神山を、俺は下駄箱で呼び止 めた。 「どうしたの?なに? 」  首を傾げる仕草もまた可愛い。  俺は、GODIVAの箱を神山千代子に差し出した。  神山は、じっとGODIVAの箱を見ていたが、ややあって 「受け取れない」    と言った。  受け取れない?何で? 「スーパーマーケットで買った義理チョコに、GODIVAなんて悪いよ。受け取れない。ごめんね」  そう言って、神山は風のように去って行った。  呆然としていると、同じクラスの齊藤という奴が現れて、 「それ、GODIVAじゃん。どうしたの?」  と訊いてきた。 「齊藤。お前、神山からチョコレート貰ったか?」   と訊くと齊藤は 「貰ったよ」  と頷いた。   「神山、スーパーでバイトしてるだろう?一人につき、いくつチョコレートを買えってノルマ、あったらしいぞ。多分、クラスの男子全員が神山からチョコレートを貰ったと思うぜ」  と齊藤は言った。  (特別じゃなかった・・・・・)     俺が好きで、チョコレートをくれたのではない。ただ、ノルマを達成する為だけにチョコレートをくれただけなのだ。俺は、何も知らずに浮かれていただけ。  俺はその場に座り込んだ。
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