ハルノオトのおとしもの

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 ななめ下からひょこっと、とってもかわいらしい顔があらわれたのです。  あのお、すみません、おとしもの、とどいていませんか。  頭にみつあみのおさげをかざった小さな女の子は、わかい女性警官(じょせいけいかん)を見つめながら、ふたたびたどたどしいながらもはっきりと質問をしてきたのです。  新米(しんまい)警官は最初びっくりしていましたが、すぐさまおちつきをとりもどして、その小さな女の子に質問を返しました。  ねえ、おとしものって何かな。交番(こうばん)にはいろいろなおとしものが届いてくるのよ。  みゆきからそう言われて女の子はしばらくうーんと考えこんでしまいました。何かうまい言葉が見つからないようすで、やっとのことでひとこと、こうつぶやきをこぼしたのでした。  うんーとね。わたし、おとしちゃったの。ハルを。こちらにとどいてないかしらとおもって。  みゆきはハルと()いて、いったいどういうことだろうと思いました。  ハル、はる、()る、()る、え、どういうこと。  みゆきがイントネーションを変えて、いろんなハルを考えます。
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