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花井春ちゃんがスマートフォンを受け取るとすぐに、着信音が鳴り出します。サクラにちなんだ童ようの着信音です。
もしもし、ママ、いまわたしね、こーばんにきているの。うん、ハルノオトおとしちゃったんだけれどね、うん、シンジくんママがひろってきてくれて。うん、よかった。うん、ちゃんとおれいいったよ。うん、けーさつのかたにもいいます。
電話を切った花井春ちゃんは、みゆきに向かってぺこりとおじぎをし、ほほえみながら言いました。
どうもありがとうございます。
その瞬間、春の風の音が春ちゃんをやさしくつつみこむように吹き、やわらかなサクラの香りと、サクラの花びらの歌声をとどけてくれたのでした。
みゆきは、春ちゃんに、そして春の音をならす春のヨウセイに対して、ただそっとやさしく、どういたしまして、とつぶやいたのです。
おしまい
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