ハルノオトのおとしもの

7/7
前へ
/7ページ
次へ
花井春(はないはる)ちゃんがスマートフォンを受け取るとすぐに、着信音(ちゃくしんおん)()り出します。サクラにちなんだ(どう)ようの着信音です。  もしもし、ママ、いまわたしね、こーばんにきているの。うん、ハルノオトおとしちゃったんだけれどね、うん、シンジくんママがひろってきてくれて。うん、よかった。うん、ちゃんとおれいいったよ。うん、けーさつのかたにもいいます。  電話(でんわ)を切った花井春ちゃんは、みゆきに向かってぺこりとおじぎをし、ほほえみながら言いました。  どうもありがとうございます。  その瞬間(しゅんかん)、春の風の音が春ちゃんをやさしくつつみこむように吹き、やわらかなサクラの香りと、サクラの花びらの歌声をとどけてくれたのでした。  みゆきは、春ちゃんに、そして春の音をならす春のヨウセイに対して、ただそっとやさしく、どういたしまして、とつぶやいたのです。 おしまい image=513327389.jpg
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加