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「わたしの中にいるお母さんが言うの。兄さんを抱き締めて、って」
貴臣の瞳が大きく揺らぐ。
「優香……」
美夕の中で何かが弾けた。
互いに自然と手を伸ばして抱き締め合い、唇を重ねていた。
舌を絡めて吸う。
何度も何度も。
何度でも。
愛してる。
この感情は誰のもの。
美夕は、心を覆う何かに呑み込まれながら、貴臣の頭を抱き締めた。
「貴臣君、これが最期」
言いながら目を閉じ、息を吐いた。
「全部、吐き出して。自由になって」
美夕の腕の中で貴臣が小さく頷いたようだった。
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