父の言

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 美夕は、南向きの大きな窓の前に座っていた。 冬の昼下がりの陽だまりの中、柔らかな陽光が美夕を美しく包み込んでいた。  暖かな日差しとリンクするシフォンのようなフワリとした淡色の部屋着は、襟ぐりが大きく開いており、白い肩が見えた。  日差しを逆光に見返る美夕は、ドキリとさせる妖しさを秘めていた、 「もう起きて平気なのか」  美夕は静かに頷いた。  そばに来た貴臣の伸ばした手を、美夕はそっと遮ろうとしたが、その手が掴まれた。 「いやよ、兄さん」  視線が真っ直ぐにぶつかり合う。  貴臣の切れ長の美しい目に、美夕の目が潤む。 「そんな顔でイヤと言われてもな」 「にいさ……っ」  抱き寄せて、抱き締め、キスをする。 「んんっ、ん」
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