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夢憂病
いつからだろうか。
私は、夢が上手く描けなくなった。
悪夢のようなボロボロの夢を描いて魘されて、再び筆をとるのが怖くなる。
それでも人は夢みずにはいられない。
多分それは、みんな同じだ。
「岡崎夢見さんは、夢憂病です。」
病院で宣告を受け、その後学校でも教師の口から言われ、いよいよその事実が実感を伴って飛来する。
夢憂病。それは、未来の道標を失う病気。周りの友人が次々と夢を語り進路を定めていく中で、私一人が、先の見えない薄闇に包まれたまま同じ場所に立ち尽くしている。
胸がバクバクと激しく打ち付け私の意識は時計の針を超えていく。ぐるぐる回ってまた元の場所。それでもその景色はちょっとだけ変わっていて、私さえもう元の私じゃない。それなのに、私はちっとも前になんか進めちゃいない。変わらないステージの上で変わり続けるオーディエンスと舞台と私。ぐるぐる回って目を回して異物が込み上げる感覚を押し殺そうとすると自然と目からは涙が溢れる。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
なんで私なの?
私には、夢があるのに。
もう、上手に描けない。
「ぐちゃぐちゃぐちゃ」
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