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「大変申し訳御座いませんブラッド様。新参のものが手違いを起こした模様で御座います。どうぞ処罰を」
「ああ、そうだな…」
城代と呼ばれた黒いローブを纏った白骨死体が男の傍へと歩み出る。白骨死体の手には太い鎖が持たれ、その鎖に繋がれたふたつ頭の大きな狼が耳を垂れ下げて震えていた。
玉座から立ち上がった男はそのふたつ頭に歩み寄って片方の頭を踏み潰した。
ギャインという声に、頭蓋の砕ける音と目玉と脳が飛び出る粘土のある音が響く。
俺はとうとう床に胃の中のものを吐き出した。
「まあこれでいいか」
「寛大な処置、誠に有難うございます」
足音が此方に近付いてくる。一歩また一歩と近づく度に俺の心臓が速くなる。
俺もあんなふうに殺されるのだろうか。
肉食獣に追い詰められた獲物の気分なんて比ではないほどの恐怖だった。
とうとう目の前まで来た男は、赤黒い血がついた靴で床にひれ伏す俺の顎をぐいと上げさせた。
「まだ若造ではないか。牧師には見えんな…見習いの弟子か何かか?」
俺の胸元から下げられた銀のロザリオを見て男が聞いた。
返事は出なかった。恐ろしさのあまり喉は引き攣って声を出すこともままならない。
「兄弟達よ、見るといい」
男は未だ殺戮と姦淫の狂宴を続ける三つの影に声をかけた。
影はそれぞれに血に濡れた顔を向ける。
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