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赤い月夜の魔宴
「なんだ?男が一人混じっているじゃないか」
聖女達の無残な亡骸の中。
口元から鮮血を滴らせたそれは細い亀裂のような笑みを浮かべて笑った。
月の赤い夜は外に出ては行けない。
魔物達のサバトへ連れていかれてしまうから。
子供の頃から父に言いつけられてきたその言葉の意味を、今初めて知った。
四隅の篝火しか明かりのないとても古い、石造りの大広間。その最奥には扇状になった階段があり、その上に物々しい雰囲気で置かれた真っ黒な玉座。そこに足を組んで座る一人の男。
その男を取り囲むようにして床には20を超える数の若い修道女の死体が転がっていた。
先程まで薔薇色をしていた彼女達の頬は今は目も当てられない程に白い。首から鮮血を流し目は虚空を見つめている。
神の妻である彼女達の生き血を啜り死体を犯す三つの影は見るも恐ろしく、生臭い血の匂いと残酷な姦淫の音に吐き気が込み上げた。
「攫ってくるのは修道女のみの筈だろう」
艶のない闇のような黒髪に真っ赤なふたつの目。まるで血溜まりのようなその色を見た瞬間、その禍々しさに震えが止まらなかった。
「城代、これは一体どういうことだ」
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