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けれど、一つだけわかることがある。
それは、私はそんな彼のことが好きだと言うこと。
楽しそうに数式の事を話す彼の顔が好き。
普段は根暗さんなのに、数式のことになると途端に顔を輝かせ、饒舌に語りだす。
本当に数式のことがすきなんだな、と思える。
そんな数式大好きな彼の事が大好き。
だけど──…。
「何をぼーっとしてるんだ?」
彼に声を掛けられ、私は思考から現実に戻された。
「あ、ご、ごめん!ちょっと考え事してた!えっと、何の話だっけ?」
私がそう言ってあたあたとしながら話を戻そうとすると、彼はひとつため息を吐いて、
「いや、いい。君には難しい話だろうからね」
と言って本に戻ってしまった。
…まただ。
私は小さく嘆息を溢した。
──…だけど、
彼は、こんな私のどこが好きなんだろう?
話も趣味も合わない、馬鹿で、元気だけが取り柄の私。
彼はこんな私のどこが好きで、私と付き合っているのだろう。
──いや、本当に好きなのかどうなのかさえ怪しい。
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