私の彼は数学者

4/9
前へ
/9ページ
次へ
「…君は、」 ふと彼の声が聞こえ、私は顔を上げた。 「…何?」 「100という数字がどういう数字か、知っているか?」 彼の唐突な質問に、私は目を丸くした。 「それくらい知ってるわよ。馬鹿にしてるの?」 私がそう言うと、彼は珍しく苦笑を溢した。 「そんなつもりはない。…どういう数字だと思う?」 いつもならここで話をやめるはずの彼が話を続けた。 それが珍しくて、私は悩んでいたことも忘れて答えた。 「子供の頃に習う、一番大きな数字」 何とも子供っぽい解答だと自分でも思う。 案の定、彼もそれには笑った。 ちょっと嬉しい。 「確かにそうかもな。しかし、もっと違うものがある」 彼は本を置き、真剣な顔をした。 「100%という言葉もある通り、100というのは完璧な数字だ。分かるか?」 「…へぇ、そうなんだ」 言われてみれば、100を基準に考えられることが多い…気がする。 いや、馬鹿だから分からないけど。 「…人は誰しも、1人前じゃない」 「…は?」 彼の突然すぎる言葉に、私は思わず眉を(ひそ)めた。 「完璧な人はいないんだ」 「はぁ…」 言いたいことは分かる。 だが、ここまで話が飛ぶのは初めてだ。 …彼は遂におかしくなってしまったのだろうか?
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加