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「……わかった。ガイ。お前の言うことを聞こう。さぁエリミ。お前も俺と来るんだ」
私の願いがイリヤ様に届いたのか、私に手を差し伸べて下さり、私はそれをしっかり取ると、
「はい! 王様は姫様のお手をしっかり握っていて下さいませ! 今から私たち三人は、ここの世界では無い、並行する他の世界へと飛びます。皆様、今一度深呼吸を!」
「ガイ! あたしと兄さまから離れないでくださいです!」
「分かっておりますとも! それでは詠唱開始します。異世界転移魔法召喚! 神よ! 今こそ我に力を!!」
詠唱した瞬間でした。私は胸の前で手を組み、目を静かに閉じました。
瞬間、黄金に煌く光の粒が私達三人を覆うと体に微弱の振動を感じ、それと同時に意識が遠くなるのを覚えました。
「王様! 姫様! しっかり私に掴まっていて下さいね!」
「あぁ。信頼しているぞ、ガイ」
王様が微かに微笑むと、私は目を瞑り、この魔法の成功だけを神に祈ったのです。
実は私、このパラレルワールドへの道を開く魔法というのは、初めてで、この魔法は先祖代々、禁忌とされていたものだったからか、切迫した状況での緊張で、本当にうまくいくかは賭けでしかなかったのです。
それが……。
こんな顛末を迎える事になるとは思ってもいなかったのです。
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