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「昨夜、○○市の繁華街にて未確認生命体が現れました。これにより、建物3棟が半壊、2人が軽傷、5人が重傷です。重傷の5人は病院に搬送されましたが、命に別条はないということです。また、謎の覆面の男も現場に居合わせたということで……」
坂井蓮が友人と大学の食堂で遅めの昼食を取っていると、テレビからはそんなニュースが流れていた。数ヶ月前、とある市街地に未確認生命体が現れてから連日のようにその報道がされている。最初は地球滅亡の前触れか何かかとも政府やコメンテーターが騒ぎ立て、誰もが恐れていたが、今は少し落ち着いていた。慣れというのもあるだろうが、謎の覆面男の存在もあるからだろう。正体は分からないが、未確認生命体に立ち向かい、撃退する謎のヒーローとして一般市民には讃えられていた。
「なあ、このマスクマンってどう思う?」
「どうって、普通にすごいなって」
「そうじゃなくて、俺達の味方なのか敵なのかってこと」
「そりゃ味方だろ。やっつけてるんだし」
「いやいや、そう見せかけてあいつらと組んでて地球を乗っ取るつもりかもしれないぜ」
目の前でラリーを繰り広げる友人達を目で追う。蓮自身はというと、味方だと思っていた。幼い頃、テレビで見たヒーローのような風貌をし、街を脅かす生物を撃退しているので、そう思わざるをえなかった。そういえば、あれだけ憧れたヒーローから離れてしまったのはどうしてだったか。
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