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親友が、交通事故で亡くなった。
その一報を聞いた時、私は放心状態のあまり、涙もでなかった。
最悪だったのは、その親友、アヤという名前なのだけれど、アヤが事故にあう前日、私達はケンカ別れをしていたのだった。
お互い気の強い私達は、よくケンカをした。ただ、仲直りするのも早かった。お互い短気だけどあっさりした性格で、私達は似たもの同士だった。
アヤの葬儀で、柩の中のアヤと再会する。美しい花に囲まれたアヤは、まるで眠っているようにみえた。ここにきて初めて、私の瞳から涙があふれた。
ケンカ別れした時の記憶がよみがえる。瞳に涙をためて、私に背をむけ去っていくアヤ。まさかあれが、生きているアヤをみる最後になるなんて。
せめて仲直りしてからだったら。
事故にあう直前、アヤはどんな気持ちでいたのだろう。
悔やんでも、悔みきれない。
葬儀が終わった。私は家に帰り、自室に閉じこもった。部屋のあちこちに、アヤの気配が漂っていた。アヤが誕生日にくれたクッションや、旅行のおみやげの置き物。スマホに残るアヤとの通信の記録。
私はその日の夕食をパスし、頭から布団をかぶってベッドに突っ伏した。
数日後。
アヤがいなくなっても、日常は進んでいく。私は体重が落ちていた。アヤが逝ってしまてから、後悔のあまり、全然食欲がわかないし、何もする気がおきない。学校の友人達からは、顔色が青白いといわれた。私は見るからに病んでいた。
学校から帰ると、いつもどおり私はベッドに突っ伏した。ろくに食事をとらないから、身体がだるい。私はいつの間にか眠ってしまった。
私は夢をみた。
幼い頃の私とアヤが、楽しく遊ぶ夢。
そう、私達は親友であると同時に幼なじみでもあった。
夢の中の私とアヤは、ままごとをしたり、公園でブランコにのったり。
夢の中のアヤは、弾ける笑顔でとても幸福そうだった。
そこでハッと、目が覚めた。妙にスッキリした気分で。
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