第二章 酒場にて

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 だが、このノイラの村でエルドレッドたちが受ける眼差しに、そこまでの明らかな棘は感じられない。  恐らくこの村の人々は、シオンの言うとおり“冒険者”や“異邦人”を見慣れているのだろう。  そこまでぼんやりと考えたエルドレッドだったが、突然エルドレッドの腹がぐるぐると豪快な音を立てた。  夕べの風が、農村特有の豊かな土の匂いとともに、何か料理の香りを孕んでいる。  肉と脂の弾ける馥郁たる匂い。  エルドレッドの空腹に、悩ましげに突き刺さる。 「あ、ごめん……」  腹の虫に思考を邪魔されたエルドレッドは、つい一言洩らす。  シオンも小さくため息をついた。 「まずは腹ごしらえだな。宿は後だ」  二人が口を閉じると、風に乗って賑やかな声が聞こえてきた。  陽気に歌い騒ぐ男たちの、無秩序な混成合唱だ。  出所は、広場に面した一軒の小さな建物らしい。  エルドレッドとシオンはその喧噪の元、小さな酒場に足を向けた。  二人が酒場のドアをくぐるや否や、それまでの賑わいは、ぴたっと止んだ。  そして客たちの視線が、一斉に集まってくる。  思わずドアの前で棒立ちになったエルドレッドは、酒場中にぐるりと視線を巡らせた。  数脚の丸テーブルに二、三人ずつ陣取った男たちと、彼はいちいち視線をかちあわせる。     
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