第二章 酒場にて

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 主人のあおり文句を聞いただけで、エルドレッドの胃袋が動いた。  口の中につばがとめどなく溢れてくるのが分かる。  しかし思わず生唾を呑み込む彼の横で、シオンが首を横に振った。 「俺には向かんな」  シオンが淡々とした調子で返しつつ、エルドレッドを示して見せる。 「そういう重いものは、こいつに食わせてやってくれ。戦士は体が元手だ」 「じゃ、シオンはいつもと同じか?」  エルドレッドは不意に心配になった。  シオンはいつも小食で、しかも同じものばかり食べている。  彼の不安が、一言の気遣いとなって口から洩れた。 「体、保つ?」  この村に来て初めて、シオンが微笑んだ。  彼が小さくうなずきながら、主人に視線を移す。 「肉はいい。パンとスープ、それに茹で卵が一つあればありがたい」 「ああ、分かった。ちょっと待っててくれな」  快く答え、カウンターの隅にある炊事台に移った主人だったが、ふと二人に目を向けた。 「お前さん方、どこから来なさったね? 探鉱師か?」 「セロモンテの街から来たんだ。他の街へ行く途中なんだけど、探鉱師じゃないよ。何で?」  エルドレッドが聞き返すと、主人は感心したように何度もうなずく。     
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