第二章 酒場にて

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「じゃあ冒険者か。この村には、方々の国から探鉱師やら冒険者やらが結構来るからな。もっとも、最近はアープから来る連中は減ってるようだが。あの国はきな臭いって噂だが、詳しいことは知らんし、わしらには関係ない。どうせよその国だ」 「この村はまだ王国だっけ?」  エルドレッドが聞くと、主人はどこか誇らしげな表情を浮かべ、深くうなずいた。 「ああ。れっきとしたランデルスフィア王国領だ。王国の一番端っこではあるがな」  そこで主人は、二人を交互に見遣る。 「茹で卵もステーキもちょいと時間がかかる。今の内に壁を見とくといいぞ」  言いながら、主人は手にした包丁をちょっと揺らし、酒場の一隅を示して見せた。  エルドレッドが主人の視線をたどると、一面に紙が貼り付けられた壁に行き当たった。 「“伝言板”だよ。冒険者に好きに使わせているんだ」  実際、その壁の前には先客がいて、カウンターの方に背中を向けたまま、熱心に無数の壁紙を見回している。  好奇心をくすぐられたエルドレッドは、高い丸椅子から降りた。 「ちょっと見てくるよ」 「好きにしろ」  淡泊なシオンの返事を受けて、エルドレッドは一人壁に向かった。  飽くまで冷淡なシオンの様子に、主人が不思議そうに聞く。 「お前さんは見に行かんのか?」 「興味ないな」  即座に答えたシオンは小さな息を吐き、どこか悪戯な光を帯びた紅玉の瞳を向けた。 「それより一杯くれないか? 自慢の地酒とやらを、な」     
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