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「大体おめえ、ご大層に剣なんか吊ってるが、どうせ大して使っちゃいねえんだろ? 使い方、ちゃんと分かってんだろうな」
「おやめなさい」
マイムーナが、無遠慮な声で笑うクライフを咎める。
「ひとは見かけでは判断できないわ」
冷たく響く美女の警句だが、クライフの口は止まらない。
「まさか剣の使い方も知らねえで、ここへ来たんじゃねえだろうな、小僧」
ここまで言われても、エルドレッドはぐっとこらえる。
酔っ払いの雑言を右から左へ受け流し、剣には触れない。
そんな我慢のエルドレッドを見て、クライフは意地悪くこう聞いた。
「そんなんじゃあ、ここまでは来られねえな。独りじゃねえんだろ?」
さすがに黙ってもいられず、エルドレッドは、柔和な顔に似合わず逞しい腕を組んだ。
彼はクライフの無礼な言葉に対し、それでも感情を抑えた調子で正直に答える。
「独りじゃないよ。仲間がいるんだ」
「仲間だと?」
クライフが、ハッと無遠慮な声を上げた。
「お前みたいな小僧に力を貸してるってのは、どんな物好きだ?」
その刹那、すぐ間近で淡々とした声が響いた。
「こんな物好きだ」
同時に振り向くクライフとマイムーナの前には、何の気配もなく白い青年が立っている。
「あら、いい男」
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