第二章 酒場にて

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 いきなり放たれたマイムーナの無邪気な一声が、一瞬エルドレッドとクライフの気勢を殺ぎ落とした。  が、ほんのわずかの差で、先にエルドレッドが我に還った。 「あれ、シオン」 「何だと!?」  シオンの名を耳にして、遅れて正気に戻ったクライフ。  目を見開いた彼が、まじまじとシオンを見つめる。  空の両手を自然に下げた何気ない姿勢で立つシオンだが、彼のどこにも隙らしい隙はない。  静かにクライフを見返す真紅の瞳も、無感情に徹している。  しかし、シオンが纏う異様に澄みきった気迫が、周囲の温度を下げている。  そんな白い青年を前にして、クライフの顔色が変わった。  今まで赤かった顔は血の気が退き、蒼黒くなっている。  わずかに震える唇で、彼がたった一言の問いをシオンに投げた。 「おめえ、あの“白い蜂”か?」 「さあな」  シオンの投げ遣りな答えを聞き、クライフの強情そうな口許が歪んだ。  その苦りきった表情からは、目一杯の後悔が読み取れる。  数秒の空白の後に、クライフが低く呻いた。 「いや、オレが悪かった」  クライフが二人に詫びを入れた。  その口調は、これまでとはうって変わって謙虚で、妙に潔い。 「おめえさんが認めた小僧だ。オレがとやかく言うこっちゃなかったな。すまなかった」     
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