第二章 酒場にて

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三  エルドレッドは、すぐに大迫力のステーキにかじりついた。  彼はきまり悪さと機嫌の悪さを隠すように、分厚い肉をひたすら貪る。  血のにじむ肉をがつがつ、はふはふと食う彼の様子は、まるで餓犬だ。  そんなエルドレッドに、シオンが飄々と聞いてきた。その態度も口調も、冷淡そのものだ。 「何かいい話はあったか?」 「あ、うん、ちょっとね」  一旦顔を上げたエルドレッドは、脂のついた口許をぐいっと手の甲で拭った。  隣の相棒に目を向けてみると、豪勢なステーキを頬張るエルドレッとは対照的に、シオンは素朴な茹で卵一つを手にしている。  すでに殻を剥かれ、つるんとした光沢を放つ卵に白い歯を立てるシオン。  淡泊な態度で淡泊な夕食を摂るシオンに、エルドレッドは続けて答える。 「そんなに大した話はなかったけど、気になる話はあったよ」  ナイフとフォークを握る手を休め、エルドレッドは張り紙の内容をシオンに語る。  無言の相棒の手元には、既に空になったスープ皿やライ麦パンの屑が見える。  すぐに張り紙の中身を聞き終えたシオンだったが、悠然と茹で卵を食べる彼は一言も発さない。     
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