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三
エルドレッドは、すぐに大迫力のステーキにかじりついた。
彼はきまり悪さと機嫌の悪さを隠すように、分厚い肉をひたすら貪る。
血のにじむ肉をがつがつ、はふはふと食う彼の様子は、まるで餓犬だ。
そんなエルドレッドに、シオンが飄々と聞いてきた。その態度も口調も、冷淡そのものだ。
「何かいい話はあったか?」
「あ、うん、ちょっとね」
一旦顔を上げたエルドレッドは、脂のついた口許をぐいっと手の甲で拭った。
隣の相棒に目を向けてみると、豪勢なステーキを頬張るエルドレッとは対照的に、シオンは素朴な茹で卵一つを手にしている。
すでに殻を剥かれ、つるんとした光沢を放つ卵に白い歯を立てるシオン。
淡泊な態度で淡泊な夕食を摂るシオンに、エルドレッドは続けて答える。
「そんなに大した話はなかったけど、気になる話はあったよ」
ナイフとフォークを握る手を休め、エルドレッドは張り紙の内容をシオンに語る。
無言の相棒の手元には、既に空になったスープ皿やライ麦パンの屑が見える。
すぐに張り紙の中身を聞き終えたシオンだったが、悠然と茹で卵を食べる彼は一言も発さない。
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